Franck THILLIEZ, La chambre des morts, Le Passage, 2005(フランク・ティリエス『死者たちの部屋』)
Pascal DESSAINT, Du bruit sous le silence, Rivages, 1999(パスカル・デサン『静寂の中の音』)
Michel CRESPY, Chasseurs de têtes, Denoël, 2000(ミシェル・クレスピ首切り』)
Laurent MARTIN, L'ivresse des dieux, Gallimard, 2000(ローラン・マルタン『神々の酩酊』)
Virginie BRAC, Double peine, Fleuve Noir, 2004(ヴィルジニ・ブラック『二重の罰』)
Michel LEBRUN, Loubard et Pécuchet, Gallimard, 1996(ミシェル・ルブラン『ルバールとペキュシェ』)
Jean-Christophe GRANGÉ, La ligne noire, Albin Michel, 2004(ジャンークリストフ・グランジェ『ブラックライン』)
Dominique FERNANDEZ, Signor Giovanni, Balland, 2002(ドミニク・フェルナンデス『シニョール・ジョヴァンニ』)


何となく何冊か購入。ティリエス(って呼ぶのか?)は30半ばで結構若めの作家。前にも書いたように、この『死者たちの部屋』という作品で今年のSNCFの賞を獲った。表紙をめくると彼の顔写真がでっかく載っている。何となくフランスの作家って著作で顔出ししていることが多いと思う。まあブランショみたいにずうっと顔出ししない例もあるが、ミステリーとかの作家は結構でたがりっぽい。日本ではどうだろうか。若い作家だけあって日本では全く紹介されていないみたいだが、こちらではいくつかの書店で平積みになっていたりと、そこそこ注目されているようだ。ところで以前も書いたように彼の作品はだいたいがフランス北部が舞台になっていて、北方推理小説の作家と自称しているらしいが、出身はアヌシー、北か南かでいえば南といった方がよいようなところ出身だ。スイスに近いところかな。まあでもこの本での紹介によればいまはパ−ドゥ−カレ県にすんでいるみたいだ。これはもう完全にフランスの北の方。さぞ寒いでしょう。国鉄の賞を獲ったから鉄道関係の話かと思ったが、紹介ではそういうことは書いていない。今読んでるオペルは結構きついのでいつ終わるかわからないけど、次はこれ読もうかな。


次のデサンからブラックまでは推理小説大賞の受賞作だ。ティリエスは南の方の生まれで北に住み着くのだが、デサンの方は逆に北の地方、ダンケルクで生まれてトゥールーズに住み着く。こちらので紹介文によると、大学で中国近代史を学んで日本でいう修士課程までいったが、奨学金がもらえず研究をあきらめる。それが1989年。でも彼は1982年から作品は書き続けていて、研究をあきらめた時点で本格的に作家を志したのだろう。でも出版してくれるところがなくてホテルや美術館の警備員などの職を見つけたり失業したりを繰り返しながら作家としてデビューするのが1992年。結構苦労しているみたいだ。作品は、といえば、紹介によるとラグビーの世界を扱った初めての推理小説とある。トゥールーズ在住ということでラグビーなのだろうか。北と南でティリエスと比べてみるのも面白いかもしれない。


次のクレスピだが、ここによるとモンペリエ第三大学で社会学を教える助教授らしい。1946年生まれ。確かこの作品は邦訳があったと思う。なので日本語のサイトにも結構書評とかあって、注文したあとでいくつか見てみた。一番最初に見つけたのがここで、かなり評価が低く、これが推理小説大賞を獲ったのが信じられない、読んできた甲斐がない、とのことだったのでどうかなと思ったが、でもほかのところを見るとまあ最高傑作! というのはないにしてもそんなに悪くない感じだと思っている人も多いみたいだ。こことか。まあでもいくつか書評を見て共通しているのは、エンディングに難ありというところか。孤島で再就職の試験があるという話。『バトルロワイヤル』的な話らしい。


次。ローラン・マルタンというありふれた名前。wikiで調べてみると高等師範学校をでた歴史家とあるが、たぶん別人だと思う。で、別のサイトを探してみて見つけたのがこちら。本人のサイトみたいだ。そこによると、フランス生まれではないらしい。1966年、アリサビエというジブチアジスアベバの間に位置するところで生まれ、作家としてデビューしたのは2002年。例によって職を転々とし、旅行ガイドや書店員や教師などをしていたらしい。職歴の中に考古学者というのもある。ちょっと不思議なのは、推理小説作家の前歴にこの考古学者というのが結構多いということだ。邦訳がいくつかあるフレッド・ヴァルガスもその一人だ。もしかしいたらこのarchéologueという言葉は日本で言う考古学者とは違うのかもしれない。苅谷俊介のような人がそんなにたくさんいると思えないのだが。で、本作品は2003年の推理小説大賞受賞作。つまり出版は2002年、これがデビュー作だ。第一作でいきなり大賞受賞というのはやっぱりすごいのだろう。主人公の刑事が自分の奥さんを女性の顔を切り刻む連続殺人犯に襲われるという話のようだ。ぱらぱら見たけど結構読みさすそうだ。


それでヴィルジニ・ブラック。こんな顔してる。もともとテレビとか映画とかのシナリオを書いていた人で、作品の出版のペースから見ると2000年ぐらいから作家活動に専念しているみたいだ。ヴェラ・カブラルという精神科医を主人公とするシリーズを何作か書いており、今回買った『二重の罰』もそのシリーズの作品だ。ちなみにその第一作である『倒錯の罠』は翻訳されている。『二重の罰』はこのシリーズ第三作目で、第四作目が近々発表されるようだ。受賞作だからよくわからず買ったが、もしかしたら第一作から読んだ方がいいかもしれない。


ミシェル・ルブランは「推理小説の父」と呼ばれているらしい。すごく有名らしくて本に著者の紹介がないぐらいだ。何しろ名前を冠した賞もある。フランス語版wikiによると本名はミシェル・カド(1931〜1996)、ものすごくたくさん作品を残していて、1956年に推理小説大賞を獲得しているけど、評価が高いのは批評の方らしい。『犯罪年鑑』という書評集を1980年から1988年を編集して、その博識が彼に「推理小説の父」というあだ名を与えているとのこと。日本語版wikiも参照のこと。かなり翻訳もある。で、今回買った本だが、これについては残念ながら翻訳がない。何で買ったかというと、何よりもそのタイトルだ。フロベールの『ブバールとペキュシェ』(翻訳は巻の三分冊。結構高い)フロベールの方は最初の数ページしか読んでないので、これをきっかけにフロベールも読むかなと思って。薄いし結構すいすい読めそうな感じ。


次、グランジェ。『クリムゾン・リバー』が有名らしい。映画で有名なのかな? ちなみに映画は彼自身とマティウ・カソヴィッツが二人でシナリオを書いているらしい。彼のほかの作品はだいたい翻訳があるのだが、この『ブラックライン』(何となくタイトルを英語にしてみた)はどうやらないみたいだ。現時点で最新作なので、じきにでるでしょう。もともとこの人は『パリ・マッチ』とか『ナショナル・ジオグラフィック』とかに書いていたライターみたいだ。90年代前半にフリーランスのジャーナリストになって、それなりに成功したみたいだ。ロイター賞とかワールド・プレス賞を獲った。まあこの賞がどんなものかわからないが。で、90年代半ばから長編小説を発表する。デビュー作の『コウノトリの道』はコウノトリの渡りのルポルタージュである『秋の旅』というテレビ番組を彼が制作したときの経験が元になっている。まあそんなわけでここで紹介してきた職を転々としてきたような作家とはちょっと違うみたいだ。フランスの推理小説賞には全くでてきていないので、批評家受けはあんまりよくないのかな? でもwikiにはデビュー作の『コウノトリの道』はむしろ批評家受けがよかったとある。かなり分厚いのでちょっと後回しになりそう…。


最後はドミニク・フェルナンデス。wikiでの紹介は何も言っていないに等しい。1929年生まれなのでかなりのベテランでしょう。ゴンクール賞も受賞している。『シニョール・ジョヴァンニ』はいわゆる歴史ミステリーというやつらしい。紹介文を読む感じでは、ダヴィンチ・コードみたいに現代に生きる主人公たちがどうこうするという感じではなくて、名もない語り手が歴史を語るみたいな感じみたいだ。100ページもないぐらいに短いので、気合いですぐ読めるかもしれない。