Jean-Claude IZZO, Vivre fatigue, EJL, 1998(ジャン-クロード・イゾ『辛酸をなめる』)
Sébastien JAPRISOT, Compartiment tueurs, Denoël, 1962(セバスチアン・ジャプリゾ『寝台車の殺人者』)
Thierry JONQUET, Le pauvre nouveau est arrivé !, Manya, 1990(ティエリ・ジョンケ『哀れな新入りがやってきた!』)


ジャン-クロード・イゾ。彼の公式サイトがある。とりあえずそこからプロフィールを。1945年6月20日マルセイユ生まれで2000年1月26日に亡くなる。あ、僕と同じ誕生日だ。まあそれはどうでもよい。名前が想像させるように父親がイタリアで生まれて1920年マルセイユに移り住む。母親はマルセイユの人ということだ。1964年に軍隊にはいってトゥーロン、次いでジブチに赴任。そこでハンストをやったりして15キロぐらい体重が減ったらしい。1966年に除隊するのだが、そのあとは政治活動を始める。1968年にマルセイユの選挙区で統一社会党PSU)の推薦で国会議員選挙に立候補その直後にフランス共産党に入党。選挙後にすぐ党を移るということは落選したのだろうか。そのあたりのことは書いていない。ということは落ちたんだろうな。でそのあと、70年代は詩人としての活動が主だった。で、いくつか詩集を出すのだが、ミステリーを出すのは1995年、だいぶあとだ。それで出たのが『完全なるクフ王』。売れたらしい。これは『マルセイユ三部作』の第一作目で、マルセイユに縁のある人だ。この公式サイトにはジャン-クロード・イゾ中学校の紹介もある。フランスでは小学校とか中学校とかまあもっといえば道路とかに有名な人の名前を冠するが、まあその一種だ。だが葉山だか逗子だかの加山雄三通りとかとはちょっと意味が違うと思う。それはともかくこの学校もマルセイユにあるのかなと思ったらダンケルクにあった。マルセイユとは真逆のほとんど最北端の都市だ。ちょうど設立されて一周年。というわけで、この人はミステリーとしても有名な作品を残しているようだが、キャリアとしては詩人としての方が長く、作品も多い。で、今回買ったのは短編集。「この世には謎などありはしない、あるのは数々の悲劇だけだ。」というジャン・ジオノの言葉がエピグラフになっている。後ろの作品の紹介を見ると人種差別のことが扱われていたりする。ミステリーと思って読まない方がいいのだろうか。ちなみに書き下ろしではなくいろいろな雑誌などに掲載されたものを加筆修正などしてまとめたもの。


セバスチアン・ジャプリゾ。本名はジャン-バティスト・ロッシ、このアナグラムがセバスチアン・ジャプリゾというペンネームになっているらしい。1931年7月4日にマルセイユに生まれる。またマルセイユだ。そして2003年3月4日に亡くなる。18歳で出版社に投稿した小説がいきなり成功し、サルトルアラゴン、アダモフなどが審査員をする文学賞を獲得する。そのあといくつか小説を出すのだが、20代半ばで広告関係の仕事をするようになる。だがその間も書く仕事は続けており、『ライ麦畑で捕まえて』などを仏訳。ルノワール作品の脚本とかも手がけたようだ。1962年に文筆業に本格的に戻るのだが、その理由はどうやら借金らしい。そしてこの時期をもって彼のミステリーのキャリアが始まる。なぜミステリーかというと、トリックのアイディアが浮かんだからだそうだ。そうして生まれたのが今回買った『寝台車の殺人者』。このときにジャプリゾというペンネームを使ったのだが、それは成功するかどうか自信がなかったかららしい。こういうのは後々になってみるとかえってかっこわるかったりする。この翌年、彼はすぐに第に作目、『シンデレラの罠』を発表するが、それは1963年フランス推理小説大賞を受賞する。その後はどうやらいわゆる純文学や映画の仕事を中心に据えていったようだ。『寝台車の殺人者』についてだが、原題は『コンパートメントの殺人者』という感じだろうか。あれは日本の列車にあるのかどうか知らないが、こっちのコンパートメントというのは4人がけの椅子が向かい合いである8人用のボックスなのだが、まあ人がいないときはいいのだが、満員だと何時間も乗るのはかなりきつい。こういう鉄道ものの推理小説はフランスではポピュラーなのだろうか。日本ではそうだろう。だから翻訳も出ているのだろう。ちなみに、鉄道に関係したミステリーを専門にした出版社がある。鉄道生活という名前の出版社で、ここが出しているレール・ノワールというミステリーのシリーズがある。まだ13冊しか出ていないようだが、タイトルを見ると明らかに鉄道を思わせるものばかりだ。以前紹介したフランク・ティリエスもここから2冊出している。こういう出版社があるぐらいだからそれなりに支持されてはいるのだろう。


ティエリ・ジョンケは1954年生まれの現役の作家で、公式サイトをもっている。このサイトにはステファニ・ラニという人が書いた彼の略歴があるので、それをかいつまんで。若い頃は政治にものすごく関心があって(もしかしたらある種のフランス人にとっては普通なのかもしれないが)、本でショアーの事実を知ってナチに対して憤り、左翼系の政治運動に参加したり、1972年にルノーの工場である労働者が殺されたことに対して労組が何もしなかったことに対して憤ったり。そのことと関係あるのかわからないけど、20歳前に哲学についての研究を諦め例によって職を転々とする。主な職はどうやら福祉や医療関係らしい。それが10年間続く。本格的に作家活動に入ったのは1984年頃だ。この頃にノワール・シリーズから『野獣と美女』が1985年に出版されて彼のミステリーにおける地位を確固たるものとする。今回買ったものは、エチエンヌというパリの教会関係者が主人公で、そこで何人かの浮浪者が殺されるという話らしい。


まだまだ終わらん。