François JOLY, Be-bop à Lola, Gallimard, 1989(フランソワ・ジョリ『ロラのビーバップ』)
Thierry REBOUD, Rimbaud dans ses œuvres, L'écailler du Sud, 2004(ティエリ・ルブ『著作の中のランボー』)
Frédérick HOUDAER, L'idiot n°2, Le serpent à plumes, 1999(フレデリック・ウデール『愚者No.2』)


翻訳のないものは勝手にタイトルを訳して日本語にしてみた。本当にこの訳でいいのかわからない。あと名前のカタカナ表記も非常に怪しい。特に苗字が。


久しぶりにネットではなくて本屋さんで買った。小さな本屋だったが親切に対応してくれたので質問しつついくつか選ぶ。というわけで上の三冊。残念ながら翻訳はないみたい。これらを選んだ理由はみんな店員の話によれば僕の住んでいるリヨンに関係しているから。一番上のフランソワ・ジョリという人はこの中でも一番有名らしい。こちらによると、1939年生まれ。いまはリヨンの隣りのイゼール県にすんでいるらしいが、教育はリヨンでもうけたらしい。ヒッピーだった。そしてこのイゼール県のはじっこでリヨンのすぐ近くにあるヴィエンヌというところでジャズフェスティヴァルがあるのだが、そのスタッフになっているらしい。そしてミステリー関係で重要なのは、これまたヴィエンヌで、Journnées du roman policier(「推理小説の日々」とでもいうのだろうか)というイヴェントを立ち上げて、そこでPrix Sang d'encreという賞をつくったことだ。Sang d'encreというのはどう訳せばいいのだろうか。直訳すると「インクの血」、だがse faire un sang d'encreという表現があり、「大いに心配する」という意味だ。つまりsang d'encreという言葉にフランス人は「不安」とか「心配」とかいう意味を読み込むかもしれない。とはいえ「心配賞」とか訳すわけにはいかんだろう。まあインクと血というのは二つ合わさるととてもミステリーっぽいので、あと、不安をかき立てる小説ということもミステリーを想像させるのでこういう名前にしたのだろう。一応この賞の受賞作品をあげてみる。

2006 : La colère des enfants déchus de Catherine Fradier
2005 : Utu de Caryl Ferey
2004 : Averse d’automne de Romain Slocombe
2003 : Nébuleuse.org de Colin Thibert
2002 : L’âme du mal de Maxime Chattam
2001 : N’oublie pas d’avoir peur de Marc-Alfred Pellerin
2000 : Vox de Dominique Sylvain
1999 : Nécroprocesseurs de Jacques Vettier
1998 : Ténèbre de Jean-Hugues Oppel
1997 : Le caveau de Claude Amoz
1996 : Chourmo de Jean-Claude Izzo
1995 : Sombre sentier de Dominique Manotti

イタリックが署名でそのあとが著者名。賞の名が示すように不安をかき立てる感じのものなのだろうか。ちなみにこのフランソワ・ジョリだが、『鮮血の音符』というのが翻訳されているみたいだ。しかし1円からってどういうことだろうか。まあそれはよい。もしかしたら彼の作品の舞台は必ずリヨンで、いつもジャズが関係しているのだろうか。よく見るとこの作品、ピエール・キュルヴェイエという人が主人公らしいが、僕の買った『ロラのビーバップ』というのも同じ主人公らしい。シリーズ物なのかもしれない。ちなみにこの本、表紙がエロい。


次のティエリ・ルブという人だが、本屋の店員はリヨンの人だといっていたけど、この本にはそれを示す記述はない。だいたいフランスの文庫には裏に作者のプロフィールがあるのだが、そこには「ティエリ・ルブは29日木曜日に生まれた。いまも存命で働いている」としかかいていない。ちょっとバカにしておるな。よく少女漫画家で生まれた年は書かずに月日だけ書く人がいるが、日にちと曜日って…。でも、ネットでちょっと調べるとリヨンのイヴェントとかによくでているようなので、たぶんリヨンと関係がある人なのでしょう。表紙には詩人のランボーがピストルを持っている合成写真がある。内容の要約をみてもよくわからない。プロの殺し屋のランボーがライデンベルグという人に頼まれてディックという人を殺す、と書いてあるが、どういうこと? まあよい。


最後がウデールという人だが、1969年にパリで生まれ、現在リヨン在住。でリヨンで30作品ぐらい発表しているとのこと。職業を点々としている。運転免許試験に8度落ちる。松浦亜弥は何回だっけ? まあとにかくフランスのミステリーの作家って結構いろんな職を転々としている人が多いような気がする。さっきのジョリもそうみたいだ。ちょっと気になったのは紹介文ではこの作品は「néo-polar」にカテゴライズされるみたいなことが書いてある。ネオ・ポラー。polarというのは推理小説のことなので、新推理小説ということなのだろうか。こちらでの説明によると、ジャンーパトリック・マンシェット(Jean-Patrick Manchette)をいわばリーダーとして現れたジャンルで、どうやら68年の革命を経て、社会問題なんかを訴えるタイプの小説のようだ。松本清張みたいな感じか? 人種問題やら社会的な不平等やら権力のドロドロした感じを描くみたいだ。陰謀好きにはいいのではないだろうか。ここら辺のジャンルで有名なのはジャン・ヴォトラン(Jean Vautrin)、フレデリック・ファジャルディ(Frédéric Fajardie)、ディディエ・デナンクス(Didier Daeninckx)などがいるらしい。ファジャルディ以外は結構翻訳があるみたいだ。ここら辺はチェックだな。


まあそんなわけでリヨン関係の人の小説を買ったわけだが、リヨンということで別にジャンルを形成しているというわけでも、文体が特徴的というわけでもないらしい。まあ何も知らないので、何かしらきっかけがあればいいということで買ってみた。今度はネオ・ポラー関係をちょっとみてみたいと思う。