Jean AMILA, La bonne tisane, Gallimard, coll. Carré noir, 1955(ジャン・アミラ『暴力組織』)
Didier DAENINCKX, meurtres pour mémoire, Gallimard, coll. Folio/policier, 1984(ディディエ・デナンクス『記憶のための殺人』)
Didier DAENINCKX, Les figurants, Verdier, 1995(ディディエ・デナンクス『端役たち』)
Charles EXBRAYAT, Les messieurs de Delft, Champs-Élysées, 1964(シャルル・エクスブラヤ『デルフトの紳士たち』)


フランス語の古本を文庫本専門で扱っているサイトを見つけてしまったのでそこで何冊か買ってしまった。日本のマンガのフランス語版も売っていた。アマゾンで買うよりずいぶん安いし、もう絶版になっているものが比較的安価で手に入るのでこういうサイトは重宝しそうだ。というわけでミステリー関係のサイトや実際の本屋などでよく目に入る名前を検索して安い本を見繕ってみた。


最初の本はジャン・アミラという人の『暴力組織』。このタイトルは原書のタイトルの直訳ではないのだが、この作品は映画化されていて、その映画のタイトルが日本では『暴力組織』となっていたので、このタイトルにした。ちなみに日本語訳がない本で、ここに示してある日本語のタイトルは僕が勝手に訳したもので、正確ではないのでご注意ください。内容を読む前にタイトルを訳そうとすると結構間違えたりすることは多い。ちなみにこの本の場合、タイトルにあるtisaneという言葉は普通はハーブティーを想像させるのだが、別の意味で殴打とか鉄拳とかいう意味もあり、そこから暴力組織というタイトルが出てきたのだと思う。goo映画での説明によると、原作者が「ジョン・アミラ」とあるけど、このジャン・アミラという人はジョン・アミラとか、ジャン・ムケールとかいうペンネームをもっている。というわけで、作者について説明すると、1910年11月24日生まれで1995年3月6日に亡くなっている。パリ生まれで、小さい頃に父親が外に女を作って蒸発、それで母親がおかしくなって病院に収容。そんなわけで孤児のように育つ。そしてほかの多くの作家と同じようにデビュー前にいろいろな職業についていたようだ。作家としての最初の作品はミステリーというよりいわゆる純文学で、アンドレ・ジッドやレイモン・クノーに注目されていたようだ。1950年に俳優でもありガリマールというフランスの大手出版社で出ているノワール・シリーズの監修をしているマルセル・デュアメルという人(この人はミステリ関係の記述でしばしば見かける。重要な人のようだ)のすすめでミステリーを書き始める。ジョン・アミラとかジャン・アミラというペンネームはどうやらミステリー用のペンネームのようだ。ちなみに彼はこのシリーズの二人目の作家らしい。政治的には無政府主義的で反軍国主義的らしい。ちなみに今回買ったものは2ユーロぐらいだったこともありぼろぼろだった。なんかいまマンシェットを読んでいるからかもしれないけど、フランスはどちらかというと本格推理ものよりもノワール、というかハードボイルドものの方が優勢なような気がする。ここら辺は日本の状況と違うのだろうか。ソースはwikiおよび推理小説の陰で


次はディディエ・デナンクスだが、この人については日本語の訳が結構あるので、日本でも結構知られているかもしれない。この人もジャン・アミラと同様にノワール・シリーズの作家として認知されているようだ。そして彼についてのどのサイトにも書いてあることだが、特徴的なのは彼の政治的活動だ。あまりにもその活動に入れあげているので、彼の書くミステリー自体も非常に政治色を帯びて、場合によっては「これミステリーか?」と読者が思ってしまうぐらいであると。とはいえ彼の名前はノワールの世界ではビッグネームではあるようだ。今回買った『記憶のための殺人』はどうやら彼のミステリーのデビュー作のようだが、この作品で1985年のフランス推理小説大賞を受賞している。ちなみにこの邦訳、『記憶のための殺人』というタイトルだが、どうなんでしょう。mémoireという語はもちろん記憶という意味もあるが、pour mémoireという熟語は「参考までに」とか「念のため」とかいう意味だ。だから素直に訳せば「念のための殺人」つまり本当は殺さなくてもいいんだけど、自分のみの安全を守るためには殺しておいた方がいいという感じの、いわばおまけの殺人という感じだと思う。もちろんまだ読んでないから、わざと「記憶のための」と訳す理由があったのかもしれないが、今回買った本の裏に書いてあるあらすじというか紹介によれば、1961年、ティロという歴史学の教授がたまたまアルジェリア戦争がらみのデモに出くわして殺されてしまう。ことの真相が明らかにされないままに20年後にその息子が撃たれることで徐々になんでその教授が殺されたかがわかるというストーリーらしいので、その教授が「たまたま」「念のために」殺されたのではないかなあとか思ってしまう。既に読んだ方は教えてください。まあそれはともかくこの話も政治的な問題が絡んでいそうだ。次の作品は1995年のものなので作者がもうだいぶ有名になってからのもののようだ。映画祭に参加するためにリールを訪れた映画好きの主人公が古道具市で変なフィルムを見つける。で、そのフィルムに魅了されてそれについていろいろ調べていくという話のようだ。リールというのはフランス北部の都市だが、以前紹介したティリエスの作品と同様に「北方」の推理小説にカテゴライズされるのだろうか。


次。エクスブラヤ。本当にこのように発音するか不明だが、この表記で既に邦訳が出版されているので便宜上こう表記する。と、思ったらwikiにはエクスブライヤ、と表記している。そしてアマゾンでもエクスブライヤで何冊か引っかかる。ううむ。じゃあエクスブライヤにしよう。こっちの方が発音として近そうだ。さて、この人は1906年に生まれて1989年に亡くなっているから、さっきのジャン・アミラと近い世代となるのかな。第一回のフランス推理小説大賞を獲ったレオ・マレも1909年生まれだからこの辺りの世代か。ちなみにシムノン1903年生まれ。干支でいうと江戸川乱歩の一回り下となる。この人はとにかく作品が多い。100冊ぐらい書いている。そしてwikiでの表現によれば「ユーモア推理小説」で有名だそうだ。実際、こちらにはいくつか彼の作品の書評があるが、ミステリー云々というよりも笑える、っていう感じだ。今回買った小説はそうではないが、イモジェーヌというキャラの冒険小説が有名らしい。全然関係ないけどジョージ・ジョーンズの歌にそういう名前の人が出てくるものがあったような…。まあよい。ちなみに彼はサンテチエンヌというところの出身なのだが、そこではシャルル・エクスブライヤ賞という推理小説の賞があるようだ。審査基準は「彼が読んだら喜ぶだろうなあと思われる小説」らしい。サンテチエンヌの一般読者の投票によって毎年決められる。なんかフランスってのは各地域にミステリー関係の賞があるような気がする。それだけ浸透しているということか。


まだまだ買った本はあるがとりあえずここらでひとまずしめる。